「悪魔の足跡」
「あっ!クマの足跡 !!」
とかではなく、
正真正銘(?)「悪魔の足跡」です。
悪魔の足跡 (フラウエン教会・ドイツ、ミュンヘン)
この写真で左方向が祭壇、右方向が出入り口。
つまり「足跡」は、ちょうどまっすぐ祭壇を向いていることになる。
ドイツ・バイエルン地方の州都、ミュンヘン市の中央には、
ふたつの高い塔がそびえています。
赤いレンガの、フラウエン教会(Frauenkirche)です。
高い塔の上では、いつも風がびゅうびゅうと吹いています。
この教会の正面入口を入ってすぐの床に、
悪魔の足跡(der Teufelstritt)と呼ばれる奇妙な灰色のくぼみがあります。
大きさは、ちょうど大人の足と同じくらい。
かかとの部分に、なにか細いものがついています。
(乗馬のとき、馬を蹴る「拍車」のように見えます。)
この足跡に足を乗せて、立ってみましょう。
すると…
ある不思議なことに気がつきます。
この大きな教会には、たくさんの窓があるのですが、
この足跡の上に立つと、
正面にあるステンドグラスを除いて、
それ以外は、ひとつも見えなくなるのです!
この位置から見ると、両脇の窓はすべて
聖堂内部の柱の陰に隠れてしまい、
見えなくなる、というわけです。
さて。
どうして、教会の床に、こんなくぼみがついたのでしょうか?
そして、どうして「悪魔の足跡」と呼ばれるのでしょうか?
それには、こんな伝説があるんです。
教会が建築された17世紀当時は、
なんと正面のステンドグラスさえも、
この位置からは見えず、
つまり、
この位置からはひとつも窓が見えない、
そんな教会だったそうです。
というのも、正面の窓の手前に、
ルネサンス様式の巨大な祭壇が置かれていたからです。
この教会、とっても大きくて、
建設には長い年月がかかりました。
街の人たちが、本当に長い間、
この教会の完成を待ちに待っていました。
そして、ようやく建物ができ、
あとは「献堂式」(司教様に祝別していただく日)を待つばかり。
そんなある日。
大きな入口を通って、ひとりの悪魔が
こっそりと教会に入ってきました。
悪魔は、街の中央にこんな大きな教会が建てられたので、
ものめずらしさと腹立たしさで、
教会を偵察に来たのです。
悪魔は入口の近くに立ち、
聖堂の内部を見わたし、
大きな声で笑って言いました。
「はっはっは! 窓がひとつもないなんて!
さぞかし不便なことだろうよ!」
いい気分になった悪魔は、
床の上に自分の足跡を残すことにしました。
ところがです。
勝ち誇った悪魔がもう一歩足を踏み入れた瞬間、
突然、たくさんの窓が目に入りました!
そう、
柱の陰に隠れていた数々の美しい窓が、
そして明るい光が、
聖堂に踏み込んだ悪魔を取り囲んだのです。
「ぎゃーっっっ!」
悪魔は、自分の負けを認めました。
そして怒りにふるえ、
変身して大風になり、
教会を吹き壊してしまおうと考えました。
しかし教会は、頑丈に造られており、
神さまの守りもあるので
どんな大風にも、びくともしません。
こうして、フラウエン教会の塔の周りでは、
今でもずっと、風がびゅうびゅうと吹いているということです。
※背の高い教会なので、写真に収めるのが大変なんですよ〜
♥♡♥ おしまい。♥♡♥
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